昨今、テレワークによりweb会議が広まった為、今まで以上に映像や音声信号のやり取りが増えたのではないかと思います。しかし、 ”映像が出ない” とか、 ”音声はどうすればいいの? ” など、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。そこで今日は、元映像音響設備のシステム構築をしていた私が、難しい話は抜きにして、ポイントとなる部分だけをピックアップしてお伝えしていきます。このページを最後まで読んで頂くと、”接続したけど映像が出ない” といったケースはほぼ解消されるはずです!
~目次~ ①HDMIとは? ②HDMIを変換や分配するにあたっての注意点 ③HDMI分配時の注意点 ④HDMIを変換する時の注意点 ⑤HDMIから音声を取り出す方法 ⑥HDMI信号を長距離伝送する方法
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①HDMIとは?
HDMIは、民生向けの規格で、ケーブル1本で映像だけでなく、音声や制御信号までも伝送できる画期的な規格になります。規格的には、5mまでが担保されています。少し詳しい方だと、DVIって聞いたり見たことある方いらっしゃると思います。DVIの規格を、民生用にアレンジして登場したのがHDMIだと思ってください。また、最近DisplayPortという新しいコネクタ形状が出てきましたが、これはHDMIの親戚(規格を作った団体が違う)と思って頂ければ大丈夫です!この3つの規格の映像信号をやりとりする場合、変換コネクタや変換ケーブルを使って、形状を変換してあげれば基本的に問題はありません。
②HDMIを変換や分配するにあたっての注意点
HDMI信号を分配したり、変換する機器をネットで検索すると、膨大な種類の機器が出てくると思います。値段で選んでいいのか?口コミで、問題なく映ったかどうか、先人の口コミを見て、使えているかどうかの結果を見て買うのがいいのか?色々と悩まれると思います。
※一般的に業務用と安価な機器の違いは、チリや埃などの耐久性、長時間使用に対する耐久性、熱による耐久性、機器そのものの信頼性、長期の保証など、様々な設定による様々な部分が強固な設計になっています
まずは大事なポイントとして、3つお伝えします。1つ目は、HDCP、2つ目は電源、3つ目は解像度です。
1.HDCP
あなたが今取り扱おうとしているHDMI信号は、HDCPが含まれてますでしょうか?そうでないでしょうか?まずはここを見る必要があります。HDCPとはコピーガードのことで、著作権保護を目的にHDMI信号の中に組み込まれた信号を言います。簡単に言えば、著作権が絡んでる映像=映画とかそういった類の映像には必ず、HDCPがかかっている、と考えて頂ければOKです。例えばブルーレイの映画の映像信号を分配したり、変換するのであれば、HDCP対応の機器でないとそもそも何も映らなくなってしまいます。これがPCのパワーポイントの映像を分配変換するのであれば、HDCPは考慮する必要はありません。よく、変換器を探してると、”PS4は不可”とか書いてあったりしますよね?これは、PS4がHDCP付与した信号を吐き出しているから、HDCP非対応の変換器を入れると映像が出なくなる、ということを言っています。
あなたが接続しようとしているソース及びソース機器が出力するHDMIには、HDCPを含んでいるのか、含んでいないのか、はたまた条件により異なるのか、取説等をよく見て確認しましょう。
2.電源
変換や分配などの機器には、通常電源が必要です。ただ、HDMIは微小の電源を流せるため、特に安価な変換器や分配器はそもそも電源を必要としない(実際は、ソース側の機器(ブルーレイレコーダーだったり、PS4だったり、映像信号を出力する側)から電気をもらっている)ものも多くありますが、ここにも一つ落とし穴があります。それは、ソース側の機器によって、送れる電源電圧が異なるということです。
簡単に言うと、接続する機器によっては、あなたが購入した分配器や変換器は、そもそも電源が足りずに正常動作していない可能性がある、ということです。
口コミを見ると、同じ変換器や分配器でも、映像がキチンと出た人とそうでない人と分かれる場合の1つの原因は、これにあります。我々専門家からすると、電源不要の機器など考えられないので、まずは”電源がどうなのか”をキチンと見るようにしましょう。変換器や分配器によっては、HDMIからの電源で動かない場合は、別途USBの口があってそこから電源供給が可能になっているタイプがあったり、そもそもACアダプター必要な機器であったり、様々ですが、電源不要タイプはそういったリスクが潜んでいることを忘れないでください。
よく口コミを見ていると、Apple社の製品がNGというのをよく見ますが、おそらくこの電源容量不足によるものと思います。私もAppleTVやiPhoneなどを接続するAVシステムを膨大な量(数百件以上)は導入してきましたが、映らないなんてことは一度も経験していませんので。
3.解像度
解像度とは、映像のサイズ だと思ってください。これはHDMIに限ったことではなく、RGBやコンポジット等、全ての映像信号に存在する概念です。
例えば、PS4とテレビを接続すると仮定します。そうすると、PS4から出力された映像をテレビが受け取って表示する、という信号の流れになります。ですので、この場合は、PS4が出力、テレビ側が入力、となります。ここで、解像度の問題が出てきます。PS4にある映像出力のコネクタがHDMIだから、HDMIコネクタが付いてるテレビやモニターだったら何でもかんでも表示できるのかと言えば、厳密には異なります。
大事なのは、出力側の解像度が何なのか、その上で、その出力される解像度を入力側(今回で言うとテレビ)が表示対応可能な解像度なのかを確認する必要があります。
もっと簡単に言うと、出力側の解像度一覧にあるどれかの数字が、入力側の表示可能な解像度一覧にあればOK、ということになります!
ただし、”より綺麗に映したい” ということであれば、出力側の機器の解像度の中でも一番大きい数字の解像度が、表示する側の機器でも対応していると、最高のパフォーマンスを発揮することが可能になります。(また、そういった場合はリフレッシュレートも大事になってきますが、今回は一般の方向けの内容ですので、割愛します)
同じ変換器や分配器でも、映像がキチンと出た人とそうでない人と分かれる場合のもう1つの原因は、この解像度にあります。同じPS4でも、接続するテレビやモニターが異なると、この解像度が当然異なってきますので、場合によっては表示されない、というケースがあり得ますので、重要なポイントとなります。
③HDMI分配時の注意点
HDMIを分配する場合、気を付けるべきことがあります。実は、ソース側(ブルーレイレコーダーだったり、PS4だったり、映像信号を出力する側)の機器と、シンク側(モニターとかプロジェクターとか、映像信号を受け取って、実際に表示する側)の機器とで、制御信号のやりとりをしています。専門用語で、EDIDというんですが、最適な解像度で映像が表示されるように、ソース側の機器とシンク側の機器とで、解像度についてのやり取りがあります。
シンク:僕はこれと、これと、これの解像度を表示できるよ!
ソース:了解、”シンク側” が対応している解像度一覧の中で、僕が出力できる解像度はこれだから、この解像度で表示してね!
みたいな感じのやりとりがあります。では、例えばPCの映像を、1台はモニター、1台はプロジェクターに出力したいとなった場合、どうなるでしょうか。
EDIDはソースとシンク側が1対1でやり取りします。分配して表示する先の、表示装置のメーカーが違う場合、品番が違う場合に問題が生じます。裏を返せば、同じメーカー同じ品番の機器に分配する場合は、特に気にすることはない、ということです。
一般的に安価な分配器は、単純に信号を分配するのみの機器が多く、たまたま映る場合もあれば、映っても映像のサイズがおかしかったり、機器を接続する順番で映ったり映らなかったり、最悪は映像が出ないというように、運次第という部分があります(笑)
我々が使用する業務用の分配器は、分配数にもよりますが、定価ベースで5~10万弱くらいするもので、もちろん耐久性・信頼性が高いこともありますが、分配先の機器ごとに映像のやりとりを確立してくれるものになります。
その中でも、比較的安価でおすすめな分配器をご紹介します! ※ただし、この分配器を使えば100%映像が出力される、という保証があるわけではありませんので、ご注意ください
ADTECHNO社の製品は、比較的安価で分配器以外にも信号変換器等豊富で、私自身はこのメーカーの信号変換器をよく使っていました。このmabcoというブランドの分配器は、HDMI出力ポート毎に各表示機器に合ったフォーマットに変換し映像出力してくれる機能があります。もし実際購入される方は、説明書をよく読んで頂きたいのですが、DIPスイッチが機器の側面にあり、これの組み合わせでEDIDの読み込み設定パターンを変更できるようになっています。出荷時の設定では混在した場合にうまくいかないケースがありますので、”自動認識モード”にて接続されると大丈夫かと思います。
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④HDMIを変換する時の注意点
まず大前提で、冒頭の②HDMIを変換や分配するにあたっての注意点 でもお伝えした、3つの注意点に気を付けてください。RGB→HDMIをアップコンバート、HDMI→RGBをダウンコンバートと言うのですが、この変換をする場合は特に②の注意点は大事になってきます。逆に、HDMIからDVIやDisplayPortへの変換は気を使わなくても大丈夫です。コネクタ形状違い、という認識で大方問題ありません。
次に実際に変換する場合ですが、極力変換箇所は少ない方がいい(信号の減衰や、トラブルのリスクが上がる為)ので、トータルで見て、最小限の変換で済むようにしましょう。例えば、HDMI→VGA→HDMIなど変換しまくってしまうと、映像信号の品質が悪くなってしまいます。
ここでは、特にトラブルが多い、HDMI⇔RGB、HDMI⇔コンポジット(昔の赤白黄色のコネクタの映像音声と思ってください)について、製品ご紹介します!
↓コンポジット↓
↓RGB↓
↓HDMI↓
↓ミニステレオ音声プラグ↓
1.HDMI(映像音声)をコンポジット(映像は黄色、音声は赤白に変換して出力してくれます)に変換するダウンコンバーター
業務用 ★解説★ あなたがこの変換器を使用して、HDMI出力付きのPCとコンポジット入力の古いビデオデッキに接続すると仮定します。 その場合、PCの出力(HDMI)が上記の変換器の”入力”に接続されますので、まずはPCの出力解像度と、変換器の入力解像度が合致するかを確認しましょう。 次に、変換器の出力はビデオデッキの入力端子につながります。ここでも同じく、変換器の出力解像度と、ビデオデッキの入力解像度が合致するかを確認しましょう |
個人用 |
2.コンポジット(映像は黄色、音声は赤白)をHDMI(映像と音声をHDMI信号1つに混ぜてくれます)に変換するアップコンバーター
業務用 |
個人用 |
3.HDMI(映像音声)をRGB(映像はD-Sub15ピンのRGB信号に、音声はミニステレオに分離・変換して出力してくれます)に変換するダウンコンバーター
業務用 |
個人用 |
4.RGB信号+音声信号(ミニステレオ)をHDMI(映像音声)に融合・変換するアップコンバーター
業務用 |
個人用 |
⑤HDMIから音声を取り出す方法
映像信号に音声をのせて、HDMIにまぜることを ”エンベデッド” といい、逆に、映像+音声がのったHDMI信号から、音声信号を分離して抽出することを ”ディエンベデッド” するといいます。
上記で紹介した信号変換器はこれら機能もあわせて搭載されてますので、パソコンの音声をミキサーに入力することでスピーカーから出力したりすることが可能となります。
もしHDMI信号は変換したくないけど、HDMI信号に音声をのせる、または分離する、ということだけを行いたい場合は、それ専用の機器があるのでご紹介します!
★注意★
PCの出力がHDMIで、このHDMI信号にのっている音声を使用する場合は注意があります。Windowsの場合、”HDMIケーブルをPCに接続する”と、デバイスの画面のHDMIの設定画面が変わります。ここで、”音声をHDMI信号へ一緒にのせる” か、”のせないか” の選択の設定が実はあります。
ご存じの方が意外と少ないのですが、もしHDMIに音声をのせたい場合は、必ずHDMIケーブルを接続した後に、”音声をHDMI信号へ一緒にのせる” 設定にしてください。そうしないと、HDMIには映像信号のみしか乗らず、ヘッドフォン出力から出力されることになります。
業務用 |
個人用 |
⑥HDMI信号を長距離伝送する方法
HDMIは規格上5mまでしか伸ばせません。これを延長する方法は3つあります。
映像機器メーカーは、下記の順で信頼性が高いとしきりに言っていますが(1番が信頼性が低く、3番が高い)、実際、2番の補償器は取り扱うメーカーは少ないので、実質1か3番の手段になります。
1.HDMI補償回路(イコライザー)付きのケーブルを使用する(注意:ケーブルに方向性があり、方向間違うと映像出ない)
2.HDMI補償器を配線上にかませる
3.LANに変換して長距離伝送する
1.HDMI補償回路(イコライザー)付きのケーブルの紹介
こちらは、激安の聞いたことのないメーカー品か、我々映像音響屋が絶大な信頼を置く、カナレ製のケーブル、あとはサンワサプライなども出していますが、聞いたことないメーカー品は置いておいて、カナレ製のケーブルが安価な為、こちらをご紹介いたします!
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あとは、特にノイズにめちゃくちゃ強いとされる光ファイバーを使用したHDMIケーブルもありますので、こちらもご紹介いたします!曲げにもめちゃくちゃ強く、結んでも使えてしなやかで柔らかい、非常に使いやすいケーブルです!
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同じ光ファイバーを使用したケーブルで、コネクタが邪魔で通線できない!という時に活躍する、コネクタ脱着式のケーブルです!
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3.LANに変換して長距離伝送する製品の紹介
LAN伝送の場合の注意点です。LANケーブルは、UTPとSTPと2種類あるのご存じでしょうか?STPはシールドがされていて、ノイズに強いケーブルになっています。LAN伝送を行う場合は、必ずSTPのLANケーブルで、かつCAT6を使用することをお勧めします!それにより、思わぬトラブルを回避することにつながります!
ここまで、個人用の機器も紹介してきましたが、このLANを使用したエクステンダーは安価なものを使用した経験が無いため、業務用のみご紹介いたします。
各メーカーごとに、LANの必要本数や延長距離等、様々ですので、選ばれる際はご注意くださいね。
1つだけ、またまたADTECHNO社の製品ですが、こちらはHDMIだけでなく、USB信号もIR(赤外線のリモコン信号)もRS-232C(パソコンの通信で使用する通信規格)も全てLAN1本で伝送できる優れものをご紹介いたします!!
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以上、皆さんの参考になりそうな情報ありましたでしょうか?!最後まで読んで頂き、どうもありがとうございました!!