私は以前医療機器のメーカーに勤めており、パルスオキシメーターも一部携わっておりましたので、今日は最近話題のパルスオキシメーターについてお話させていただきます。
~目次~ |
まずはじめに
最近新型コロナウイルスの報道で、パルスオキシメーターという単語が出てきます。
しかし、このパルスオキシメーターは、新型コロナウイルスの感染予防になるわけでもなければ、感染しているかどうかを判断する機械でもありません。
パルスオキシメーターとは何なのか、正しく知っていただき、その上で日々の健康チェック目的で使っていただけるよう、今回記事を書きました。
なお、私自身はドクターでも看護師でもありませんので、本記事の内容は”参考”として頂きますようお願いいたします。
パルスオキシメーターは、何を測る機械?
パルスオキシメーターは、医療従事者や、現在病気をお持ちで測定されている方以外は、恐らく初めて聞いた医療機器ではないかと思います。体温計や体重計、血圧計などは我々一般の人も馴染みもあり、ご家庭に常備されている方も多いのではないかと思います。
そもそもパルスオキシメーターは、何を測る機械なのか?
答えは、動脈血内の酸素飽和度を測定する機械 というのが正解です。
ここで、動脈血?と疑問に思った方、小学生の理科を思い出して下さい。動脈と静脈という言葉を習ったかと思いますが、何だったか覚えてますか?
答えは、心臓から送り出されるのが ”動脈” で、心臓へ戻っていく血管が ”静脈” になります。人間が生きているメカニズムになりますが、心臓から送り出された血液(=動脈)には、我々が呼吸により吸い込んだ空気内の酸素がふんだんに含まれています。我々の体内の組織は、酸素を必要としますので、それら各組織に酸素を運ぶのが血液であり、動脈の役割になります。動脈が各組織を回って酸素を渡し終わり、今度は戻ってくる血液が静脈、ということになります。
次にもう一歩踏み込んだ話になります。血液の中で、酸素を実際に運搬する役割をするのが ”ヘモグロビン” になります。我々の生活に馴染みがある物に例えると、ヘモグロビンが車で、酸素がその車に乗る人間、だと思ってください。
ヘモグロビンは4人乗りの車(酸素を4つまで運ぶことができる)になります。この車は、心臓で4人の人間(酸素)を乗せて、血管内をドライブします。ドライブしながら、道路周辺(血管の周りの組織達)に人間(酸素)を降ろし、酸素を供給する役割をします。4人とも降ろし終えると、静脈血として心臓へと戻っていきます。
ここで、例えば心臓から10台の車(ヘモグロビン)が次々に出てきました。MAXで乗れる人間(酸素)は40人ですよね?ですが、実際に乗っていたのは、36人でした。乗車率90%です。
この乗車率を測定する機械が、パルスオキシメーター になります。
今回の例で言うと、パルスオキシメーターで測定した動脈血酸素飽和度(=SpO2(エスピーオーツーと言います))は90% ということになります。
別の言い方で、サチュレーションや、サット、って言い方もしますが、全て同じ意味です。
パルスオキシメーターで貧血はわかる?
いきなり答えを言ってしまうと、 ”分かりません” というのが答えになります。
貧血というのは、前項の説明の中で車の話をしましたが、この車の台数が少ないことを貧血 といいます。
パルスオキシメーターで分かるのは、あくまで車(ヘモグロビン)に乗っている人(酸素)の乗車率が分かるだけで、車(ヘモグロビン)の台数が多いか少ないかは分かりません。車(ヘモグロビン)が少なくても、どの車も皆4人(酸素)が乗っていたら、パルスオキシメーターで測定した値は100%と表示されます。
ですので、貧血かどうかを知りたいとなると、病院に行って採血をするしかないのが現状です。ちなみに、パルスオキシメーターで測定できるSpO2も採血をすれば本当の正しい数値が分かります。パルスオキシメーターは、あくまで、簡易的に採血しないでも、動脈血内の酸素飽和度を測定できる機械、ということになります。
動脈血酸素飽和度を測定する理由
このSpO2と呼ばれる数値が低ければ低いほど、それだけ体内に酸素が運べていない、ということを表します。通常、健康な人は、地上で測定すると97%~100%がだいたい妥当な数値になります。喫煙してる人は、少し低めになるので、95%~100%くらいになります。
では仮にSpO2を測定して、値が85%だったとしましょう。
なぜなのか?と問われたら、それは病院で先生に診断してもらって、原因を探ってもらうしかありません、というのが答えになります。SpO2を測定しただけでは、何の病気か分かりませんし、あくまで病名を診断する上で必要なパラメーターの1つであり、患者さんの状態がどうなのかを知る上で必要なパラメーターの1つ、として認識頂ければと思います。
体調が悪く病院へ行くと、まず熱はないか(=体温)?呼吸は大丈夫か?脈拍はどうか?血圧は?って診ますよね?これら4つは、医療用語で ”バイタルサイン” といって、人間の生命活動にとても重要な指標な為、真っ先に測定する項目になります。SpO2は第5のバイタルサインとも言われていて、今や医療現場では欠かせない指標になっています。
ちなみにSpO2が下がってくるとどうなるか、まず初めに呼吸数が上がってきます。体内で酸素が足りないから、呼吸する回数を増やして、何とか酸素を補おうと脳が指令を出すんですね。それでも足りないとなると、SpO2もいよいよ下がってきて、呼吸増やしても酸素が足りない=息苦しい という状態に陥ってきます。そうなってくると、今回報道でもよく名前を聞く、人工呼吸器等の出番になってきます。
ちなみに、聞いた話ですが、富士山の山頂でSpO2を測定すると、80%~85%くらいになるそうです。私も一度富士登山して山頂へ登りましたが、1っ歩踏み出すだけで、すごい苦しくて呼吸数上がります。”普通に立っている”だけで結構苦しく、少しでも体を動かせば、たちまちゼーゼーハーハーです。あんな状態がSpO2値90%を切っている時の状態です。
まとめですが、あくまでSpO2は病気を診断する上で必要なパラメーターのうちの1つである、という認識を頂ければと思います。
パルスオキシメーターの測定原理を知ることで、測定する際の注意点が分かります!
パルスオキシメーターは、 ”赤外光と赤色光” という2つの波長の光を使って測定します。具体的には、爪側に光を当てて、指の中を光が透過して、指の腹側で光を受光します。受光した光の比率を分析することで、SpO2を測定しています。その為、ここでネックとなるのが女性です。
女性はネイルアートをされている方が多いですが、全てNGとなります。
マニキュアならOKか?とか、何色なら大丈夫?と聞かれることもありますが、基本的には 全てNG となります。ネイルチップなどは完全アウトです。マニキュアだけだと、パルスオキシメーターを装着するとだいたい値が表示されることが多いのですが、その表示されている値の ”信憑性” に?が付いてしまい、結局正しいジャッジができない、というのが正直なところです。
ですので、新型コロナウィルスが落ち着くまでは、理想を言うと、爪には何もつけないのが一番ベストだと思います。最低でも、除光液1つあれば落とせる、状態にしておくのがいいでしょう。
パルスオキシメーターの信頼性について
パルスオキシメーターは、優秀なものでも3%前後の誤差があります。
次に、一般的にネットで買える、指にクリップのように挟んで測定するパルスオキシメーターは、基本的には ”大人用” です。中学生くらいでしたら大方大丈夫ですが、小学生や幼稚園生については、指が細いため、キチンと測定できません。測定できたとしても、その値の信憑性に ? がついてしまいます。
医療現場では、赤ちゃんや小児でパルスオキシメーター使用する時は、絆創膏のようなテープ式のものを使い、測定するのが一般的です。
また、ネットで購入できるクリップ型のパルスオキシメーターの価格は非常にピンキリで、購入を検討されている方は迷われると思います。医療現場では、コビディエン社、日本光電、コヴィディエン社、マシモ社の3社でほとんどのシェアを占めています。その中でも、特に優秀とされているのはマシモ社、と言われています。
パルスオキシメーターは測定原理上、血管の拍動(血管の収縮)が小さいと測定が出来ないのです。
よって、高齢の方だったり、極度に冷え性の方なんかは、安価な機器だと測定できないことが多いでしょう。また、本当に体調が悪くなってしまった状態だと、安価なものは測定できない可能性があります。逆に言うと、健康な人を測定することに限れば、価格差はあまり関係しないと思います。
要は、”本当にSpO2を測定したい” という状況に陥った時に、安価な機器は測定できない、もしくは表示されている数値が実際とかけ離れている、という可能性が大きいです。
上記3社のうち、クリップ型を発売しているのは、私が知る限り日本光電とマシモ社の2社です。あと、実際に病院で見たことあるのは、日本精密測器のパルスフィットですね。
現在、優秀な機械は在庫がなく手に入らないそうですが、正しく理解し、使って頂ければと思います。最後までありがとうございました。